ニセ!


知ってましたか?「ホンソメワケベラ」は実は、
「ホソソメワケベラ」だったという事実。

元々は“細染め分け”のベラと言うことでちゃんと図鑑にもそのように記載されていたのが、
誤植により、“ホソ”→“ホン”となってしまい、なんとそれがそのまま定着した!。

びっくりだね〜。確かに生物の名前ってのは何故かカタカナ表記に決まっているから、
「ソ」と「ン」は間違いやすそうだ。
本当は「マンタ」じゃなくて「マソタ」だったりしてな。

さて、そんな「ホンソメワケベラ」にまつわる、あるダイビングのお話。

その日は大瀬崎。平日でたしか2〜3人のゲストとのファンダイブだった。
みなさん慣れたメンバーだったので、こんなブリーフィングをしての潜水。
『、、、15m位にネジリンボウが何匹か居ると思うので、僕が合図したら伏せて下さい。
ジリジリと近づくと大丈夫ですから。
そのまま降りていって20m近辺の空き缶や瓶に、ミジンベニハゼが居ると思うので探してみますか、、』
とこんな感じだったと思う。

んで、潜って砂地の水深18〜9mのところに、小さい珊瑚のついた岩が1つ。
見るとカサゴがホンソメワケベラにクリーニングされてます。
さらに近づくと他にも魚が何匹かいて、順番待ち。
ホンソメワケベラは2匹。さらに近づく。

すると、、

なにを思ったか、ホンソメくん、K持さんのマスクをツンツンしだす。そのうちレギもツンツン、
しまいには、K持さんの顎の無精髭をツンツン。
無精髭は大変お気に入りだったようで、他の魚が順番待ちしているにも関わらず、
ず〜と、K持さんの無精髭のお掃除を一生懸命にやってくれてた。

休み時間の時、ゲストのK持さんいたく無精髭のお掃除を気に入っていた様子。
ならばと、二本目もまた先ほどの岩のところに。

すると、、
いたいた、今度もまた他の魚のクリーニングしてる。
近づくとまたやってきて、今度はわたしのマスクをツンツン。近すぎて顔がよく分からん。
でも直ぐにわたしを離れ、K持さんのところに。
そいでまた、無精髭をクリーニング。。

いや〜、同じ魚に懐かれたようで、うらやましい。
なんでオレには来てくれないんだよ。でも可愛い♪

このホンソメ君はクリーニング魚として超有名。
ちなみに“掃除屋”とよく言うが、まるで殺し屋のようだからここではクリーニング屋かクリーニング魚とする。

お掃除される魚は、ほとんど全てじゃないかな。
マンタ、イソマグロ、マンボウ、カメからカサゴ、カワハギ、果ては自分より小さいネンブツダイとか、
もう何でもござれ。

ところで一つ疑問に思わないかい?

自分より大型魚とか掃除してて、食べられないの?

例えば、ハタとかが、
『クリーニング屋さん掃除お願〜い。ハイあ〜ん。』
とか口開けて。鰓、歯の隙間、皮膚と掃除してもらった後で、『パクっ!』とやられることないのか?

どうやら、それはないようだ。
魚にとって鰓や皮膚の寄生虫は大問題。そのまま放っておくとかなりの悪影響。
かといって当然自分ではどうも出来ず、猿みたいに仲間同士でノミとりのような生態もない。
つまり、被掃除魚からするとホンソメ君はとても貴重な存在となり、
大型魚がホンソメワケベラ一匹を食べてしまう恩恵より、
食べずに掃除してもらう恩恵が勝るため。

しかし、ここでとんでもないヤツが現れた!

詐欺師。

彼は、自分をクリーニング屋と偽り、近づき、、

射殺する。ってのは冗談で皮膚や鰓を食いちぎる!

「そんなの見破ること出来ないのかよ」って今あなたは思ったことでしょう。

彼の名は“ニセクロスジギンポ”なんか名前も性格悪そうに聞こえるなぁ。
まず容姿がホンソメ君にそっくりなのは言うまでもない。

加えて、泳ぎ方もマネる。

そして詐欺にハマる。

近づいた魚は、『ホンソメく〜ん。ここがカユイの〜』
と口や鰓ブタあけると、

食いちぎって直ぐ逃げる!

一体全体どこでどうやって、こんな嫌らしい能力が進化したのか?

むか〜し、昔、ニセクロスジギンポの中には、
泳ぎだけマネる遺伝子と、容姿だけマネる遺伝子を持つヤツがいたと思う。
(ここでは彼らはニセクロスジギンポでない事になるけど)
当然ながらどちらも自然淘汰されていく。つまり、見破られるわけだね。
そこで突然、容姿も泳ぎもマネてる、
正に他の魚から見て、『おっ!ホンソメ君だ』と見える遺伝子を持つ個体が生まれる。
かくして、この種は非常に補食されにくいため、詐欺師となった。

いいかな?付いてきてる。
では次、被掃除魚、つまりクリーニングされる魚からの視点で見てみよう。

『わ〜い、ホンソメ君だ。掃除して〜♪』
と近づいたら射殺、じゃなく食いちぎられるわけだ。
だったら、『コイツは本物か偽物か?』と怪しむ個体が出てきても不思議ではないよね。
これが、度をこすと、
『ニセクロスジめ食ってやる!』と思ったら、、
『ホンソメ君だったよ』と言うことがあるかもしれない。
そんなことになると、ほぼ補食されないホンソメワケベラの優位性が失われるのでは?

進化は魚たちに本物と偽物を見破る直感を与えたか?

この続きはまたの機会に・・・
面白いようならつづけます。

《わの海より》
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